ARTICLE19の声明(和訳)

 

                               2016年4月19日

 

        声 明

 

  日本:メディアの自由に対する政治的な脅威が民主主義の根幹を損なう

 

 表現の自由に関する国連特別報告者デビッド・ケイが日本での公式訪問を終えるにあたり、ARTICLE19は日本政府に対し、メディアの独自の編集方針とジャーナリストの自由を尊重することに最大の努力をするように強く求める。最近、メディアの自由に対する政治的圧力が増加しているという報告がなされており、メディアが民主主義の番犬という役割を果たすのを政府が妨げようとしているのではないか、という深刻な懸念が高まる。ジャーナリストやすべてのメディアは、脅威を受けることなく、情報を収集する自由と、自分たちの選んだ方法や論調でニュースを報道する自由を維持するべきである。ジャーナリストとメディアの自由と独自の編集方針は、市民が国際法の保証する権利として情報を受け、権力者によって採択された政策を含めた公のすべての関心事を議論するのを可能にするオープンパブリックスペースの要石である。

 

ARTICLE 19はメディアの独立に政府が干渉していることを示唆する最近のいくつかの報告を懸念する。

 

● 政権に批判的な意見を述べることで知られている有名なキャスター/コメンテーターの3人が政府からの圧力によって番組でメインのポジションから降板させられたといわれている。国谷裕子氏は公共放送のNHKで、時報番組で長年にわたりキャスターを務めてきたが2016年3月末に降板しなければならなかった。同僚やメディアの専門家によると、彼女の降板は官房長官へのインタビューで、予定されていなかったフォローアップの質問をしたからだという。安倍首相と近い関係にある政府の高官をいらだたせたことが、NHKの理事会への圧力に転換したのではないか、と考えられている⑴。民放局では古館一郎氏がテレビ朝日の「報道ステーション」から、岸井重忠氏がTBSから、政権に批判的であったためそれぞれ降板しなければならなかった⑵。

 

● 高市早苗総務大臣がメディアの自由を損なう発言を行った。2016年2月、政府はその決定に批判的な報道をする放送への停止がありうるか、という国会での質問に、大臣は「可能性は否定できない」といった。彼女は放送は政治的に偏向してはいけないという義務を規定した放送法4条を引用したが、法律家はこの規定をメディアが自発的に適用すべき倫理規定だと解釈している⑶。大臣のこの発言は、政府は批判を容認しない、とメディアに警告しているように聞こえる。

 

● 2014年には特定秘密保護法⑷が施行されたが、それは内部告発者とジャーナリストに対する萎縮効果をもたらしている。加えて、政府の改憲草案には「公益に反する」表現の自由への制限を許す規定が含まれている。そのような曖昧で制限のない法的根拠は容易に検閲のメカニズムに変えられてしまう可能性がある

 公共の事がらについて自由でオープンな議論にメディアが貢献する力を損なわせる政治的圧力が強まるなか、有名なニュースキャスターの降板と、高市大臣の発言(それを彼女はまた繰り返したが)はそのような状況を助長するものである。以前政府は、政府と近い関係にある仲間をNHKの理事会に任命し、公共放送への影響を強めている、と批判された。2014年の1月、NHKの新会長の籾井と与党と近い関係にある同調者は、公共放送は番組の放送で政府の立場からあまり逸脱してはいけない、と言明した。メディアの自由を損なう風潮の兆候は、報道の公平性の義務に違反したとしてTBSのブロードキャスターを批判するキャンペーンを保守党の議員が先導したことでも示されている。現状がどれだけ悪化しているかは、国境なき記者団による報道の自由度ランキングで日本は2010年の11位から2015年には61位に落ちていることでも明らかにされている。

 

メディアの自由と独立に関する国際基準

 

 ARTICL19は表現の自由に関する国際法は、ジャーナリストが公益に関するすべての情報を収集しレポートする自由を保護するということを強調する。表現の自由は、情報や考えを伝達するメディアの権利に加えて、一般市民がニュースや議論についての報道を受ける権利も保護する。つまり、市民にどれだけ情報が与えられるか、というのは、自由で独立したメディアの存在によるのである。
 民主社会の番犬としての役割を果たすために、ジャーナリストには自ら選んだ方法と論調で調査し伝達する自由がなくてはならないし、政治権力を批判する自由が確保されてなくてはならない。選挙で選ばれた議員や一般に社会で大きな力を行使する人々はメディアからの非難を許容できなければならない。たとえいかに権力者の平静さを乱すことになっても、デリケートな政治問題に疑問を投げかける探求的で批判的な声としての役割を果たすことと、政府の活動を明らかにする報道をすること、がジャーナリストのプロとしての役割である。 まさにこれが、民主主義が機能するための彼らの貢献である。

 放送メディアの公的規制は国際法の元で正当化されるが、それは政府そのものではなく、独立した規制当局によって実施されるべきである。放送局が法的義務を尊重しないことがあるかもしれないが、そういう場合には独立した規制当局がふさわしい制裁を与える必要があるかもしれない。しかし、メディアの自由に関する国際法の元では、どんな場合でも、政府が放送を停止できるようなことはあってはならない⑸。

 ARTICLE19は国際法の元では、メディアの自由と独立のための環境づくりは国家の役割であることを強調する。国家は単にメディアの自由に制限を加えることをやめるだけではなく、メディアが確実に多元的で人々の中に存在する多様な意見にオープンであるようにするための積極的義務も負う。公共放送の役割とは、民間テレビが利益問題の為に放送できない、公益的に重要となる番組を放送することである。表現の自由に関する国際法のもとでは、公共放送は政府から独立していなければならいということが求められている。財政の公的支援をもって、政府が公共放送の独立を規制するのを正当化することはできない。

勧告


 表現の自由に関する国連特別報告者のデビッド・ケイは日本での公式訪問を終えるにあたり「報道機関の独立が危機に面している」と述べた⑹。ARTICLE19は安倍政権とすべての政治勢力、そしてメディアとジャーナリスト自身が、特別報告者の発表した結論を、メディアの自由の保護と尊重を改善する機会としてとらえて考慮するように強く勧める。ARTICLE19はすべてのメディアの独自の編集方針の独立とジャーナリストの自由を尊重するために最大限の努力をするように強く勧める。


翻訳:藤田早苗(エセックス大学人権センター)
JapanesetranslationSanaeFujita(HumanRightsCentre,UniversityofEssex)

 

声明の原文
https://www.article19.org/resources.php/resource/38341/en/japan:-political-threats-to-media-freedom-undermine-the-cornerstone-of-democracy

 

参考資料

⑴ SeeJ.McCurry,“JapaneseTVanchorslosetheirjobsamidclaimsofpoliticalpressure”,TheGuardian,17Feb.2016,http://www.theguardian.com/world/2016/feb/17/japanese-tv-anchors-lose-their-jobs-amid-claims-of-political-pressure;seealsoN.Thompson,“PoliticalInterference?TheCullingofJapan'sBroadcastersCulminatesinaRespectedJournalist'sOuster”,Globalvoices,4Feb.2016https://globalvoices.org/2016/02/04/political-interference-the-culling-of-japans-broadcasters-culminates-in-a-respected-journalists-ouster/
⑵ SeeTheEconomist,“MediafreedominJapan-Anchorsaway”,20Feb.2016,http://www.economist.com/news/asia/21693269-criticism-government-being-airbrushed-out-news-shows-anchors-away
⑶ SeeTheAsahiShimbun,"Communicationsministerdrawsoutrageover‘threat’tobroadcasters",9February2016,http://www.asahi.com/ajw/articles/AJ201602090074.html;seealsoTomohiroOsaki,“SanaeTakaichiwarnsthatgovernmentcanshutdownbroadcastersitfeelsarebiased”,JapanTimes,9Feb.2016,http://www.japantimes.co.jp/news/2016/02/09/national/politics-diplomacy/minister-warns-that-government-can-shut-down-broadcasters-it-feels-are-biased/.
⑷ SeeARTICLE19,«theRighttoInformationinJapan»,Oct.2015,http://bit.ly/1QurlWP
⑸ Forfurtherdetailsonbroadcastregulation,seeARTICLE19,“AccesstotheAirwaves”,2002,https://www.article19.org/data/files/pdfs/standards/accessairwaves.pdf
⑹"UNRightsExpertSeesThreatstoPressIndependenceinJapan",NewYorkTimes,19April2016,http://www.nytimes.com/aponline/2016/04/19/world/asia/ap-as-japan-press-freedom.html?


ダウンロード
ARTICLE19の声明
D・ケイ氏の訪日に関してARTICLE19が出した声明。藤田早苗さんによる和訳。
160419article19.pdf
PDFファイル 386.5 KB

注:ARTICLE19は「表現の自由及び知る権利の保護」を専門とする国際人権団体。

 1987年に設立され、本部はロンドンにある。

 


                                                                  画面の背景写真は、ジュネーヴのパレ・ウィルソン


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