2020年 新型コロナ関連活動報告

国連特別報告者 新型コロナに関して2つの声明発表

複数の国連特別報告者は、新型コロナウイルスに関して2つの声明を発表しました。
藤田早苗さんと翻訳チームが和訳しましたので参考にしてください(20/4/20 読みやすい日本語にしました)。

 

1)2020年3月16日 新型コロナ感染症:国家は緊急対策の濫用で人権を抑圧してはならないー国連専門家
http://www.nagoya.ombudsman.jp/himitsu/200316.pdf

 

2)2020年3月26日 新型コロナウイルス対策に例外があってはならない:
“誰もが人命救助を受ける権利がある”-国連専門家-
http://www.nagoya.ombudsman.jp/himitsu/200326.pdf

 


新型コロナ感染症:国家は緊急対策の濫用で人権を抑圧してはならないー国連専門家

ジュネーブ(2020年3月16日):国連の人権専門家ら*は本日、新型コロナウイルスの流行への対応で各国が安全保障のための手段を濫用しないよう呼び掛け、緊急事態における権力行使が、反対意見を抑えるために使われるべきではないことをあらためて強調した。人権専門家らは「健康をめぐる現在の危機が深刻であると認識し、大きな脅威に対する非常権限の行使が国際法上許容されていることも認めるが、国家に対しては、緊急の新型コロナウイルス対策がいずれも、妥当かつ必要で、差別的でないものでなければならないことを強く指摘する」と述べた。このような指摘は、新型コロナウイルスの流行への対応において、人権がその中心に位置づけられるべきであるとする最近の国連人権高等弁務官の呼び掛けを反映している。


国連の専門家らによると、健康や安全といった理由の如何に関わらず、緊急事態の宣言については国際法に明確な手引きが明記されている。「非常権限の行使は公的に宣言されるべきであり、移動や、家族生活、集会に関する基本的人権が著しく制限される場合においては、関係する条約機関へ通告されるべきである」。「さらに、新型コロナウイルスの流行に基づく緊急事態宣言は、特定の集団やマイノリティー、個人を標的とするために行使されるべきではない。またそれは、健康を守るという口実で弾圧的な措置を隠蔽したり、あるいは人権擁護者を沈黙させたりするために使われてはならない」。そして「ウイルス対策で課される制約は、正当な公衆衛生上の目的に基づくべきで、反対意見を鎮圧するために行使されてはならない」。


国家や安全保障機関のなかには、手っ取り早い対応を可能にする非常権限の行使が魅力的だとみなすところもあるだろう、と専門家らはみている。「過度の権力が法律や政治のシステムに組み込まれるのを阻止するために、規制は狭く規定され、公衆衛生を守るための介入手段は最小限でなければならない」。最後に、ウイルス感染が終息に向かっている国においては、当局が生活を日常に戻すために努力すべきであり、無期限に日常生活を抑制する目的での非常権限の過剰な行使は避けなければならない、と彼らは言う。「法の支配と人権の保護とともにある健全な社会の出現を促進するために、我々は各国に対し、人権に基づいたパンデミック抑制の手段を断固として維持することを勧める」と述べた。


反テロに関する特別報告者Ms Fionnuala D. Ní Aoláin
略式裁判による刑の執行Ms Agnes Callamard
表現の自由に関する特別報告者Mr David Kaye
人権擁護者の状況に関する特別報告者Mr Michel Forst
集会結社の自由に関する特別報告者Mr Clément Nyaletsossi Voule
健康への権利に関する特別報告者Mr. Dainius Pūras
教育への権利に関する特別報告者Ms Koumbou Boly Barry
プライバシーの権利に関する特別報告者Mr Joe Cannataci
思想信条の自由に関する特別報告者Mr. Ahmed Shaheed
発展の権利に関する特別報告者Mr Saad Alfarargi
居住の権利に関する特別報告者Ms Leilani Farha
水と公衆衛生への人権に関する特別報告者Mr Léo Heller
人権と国際連帯に関する独立専門家Mr Obiora C. Okafor
民主的かつ公平な国際秩序の促進に関する独立専門家Mr Livingstone Sewanyana
司法の独立に関する特別報告者Mr Diego García-Sayán
恣意的拘禁に関するワーキンググループMr. José Antonio Guevara Bermúdez , Ms. Leigh Toomey , Ms. Elina Steinerte , Mr. Seong-Phil Hong and Mr. Sètondji Adjovi;
失踪に関するワーキンググループMr Luciano Hazan , Mr Tae-Ung Baik  Ms Houria Es-Slami,  Mr Bernard Duhaime and Mr Henrikas Mickevicius

 


英語原文 https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=25722&LangID=E
和訳文責: 藤田早苗、翻訳チーム


新型コロナウイルス対策に例外があってはならない:“誰もが人命救助を受ける権利がある”-国連専門家-

ジュネーブ(2020326):国連の人権専門家らは、公衆衛生や緊急措置だけで新型コロナウイルスの危機を解決することは難しく、その他の人権問題についても積極的に議論されるべきであると述べた。専門家らは「すべての人に例外なく人命救助を受ける権利があり、そしてその責任は政府にある。リソースや公的・民間保険が不十分であることを、特定の患者集団に対する差別を正当化する理由にしてはいけない」としている。「すべての人に健康の権利がある。障害を持つ人々、高齢者、マイノリティーの集団、先住民族、国内避難民、極度の貧困状態にある人々、人口密度の高いところに住んでいる人々、居住型施設に住んでいる人々、身柄を拘束されている人々、ホームレスの人々、移民や難民、薬物依存の人々、LGBTやジェンダーの多様な人々を含め、あらゆる人々や集団が政府からの支援を受ける必要がある」。

 

「生物医科学の進歩は、健康の権利を実現するために非常に重要である。しかし、あらゆる人権も同様に重要である。差別の禁止、参加、エンパワーメント、説明責任といった原則が、健康に関する政策すべてに適用されなければならない」。国連の専門家らは、世界保健機関(WHO)がパンデミックの抑制に向けて推奨する対策を支持した。国家に対しては、公衆衛生システムに関わるすべてのセクター(予防と発見から治療と回復までの全過程に関わるもの)に必要なリソースを供給するための断固たる行動を呼び掛けた。「しかし、今回の危機対応では、より多くのことが必要である。国家は、危機によって特に被害を受けやすい人々に支援が行き届くように、追加の社会的保護措置を講じなければならない」と専門家らは強調した。「その中には、既に社会的・経済的に不利な立場にあったり、さらなる介護の負担に耐えたり、性別による暴力のリスクが増大した中に暮らしている女性を含む」。

 

専門家らは、新型コロナウイルスの感染拡大と勇敢に闘う世界中の医療従事者に感謝と賞賛の意を表明した。「彼らは膨大な仕事量に直面し、自分の命を危険にさらしながら、リソースが不十分な場合は、耐え難い倫理的なジレンマに向き合うことを強いられている。医療従事者は政府やビジネス界、メディア、一般市民から可能な限りのサポートが必要である」。

 

専門家らは「新型コロナウイルスは深刻な世界規模の課題である」と言う。「しかしながら、これは普遍的な人権の原則を再び活性化するための警鐘でもある。これらの原則と科学的な知識への信頼は、フェイクニュースの流布や偏見、差別、不平等そして暴力に勝るべきである。我々は前代未聞の課題に直面している。この危機に際し、特にビジネス界は引き続き人権上の責任を負う。協調的な多国間の取り組みや、連帯と相互信頼があって初めて、我々はパンデミックを打ち負かし、回復力を高め、成熟し、団結する。新型コロナウイルスのワクチンが発明されたら、差別なく提供されなければならない。それまでの間は、人権に基づくアプローチこそが、公衆衛生に対する主要な脅威を抑制するのに効果的な、もう1本の道すじであることが既に知られている」と専門家らは締めくくった。

 

健康への権利に関する特別報告者 Dainius Pūras

女性への暴力に関する特別報告者Dubravka Šimonović,

思想信条の自由に関する特別報告者Ahmed Shaheed

性的指向とジェンダー・アイデンティティーに関する独立専門家Victor Madrigal-Borloz

イランの人権状況に関する特別報告者Javaid Rehman

高齢者によるすべての人権の享受に関する独立専門家Rosa Kornfeld-Matte

水と公衆衛生への人権に関する特別報告者Léo Heller

真実・正義・賠償・再発防止保証の促進に関する特別報告者Fabian Salvioli,

マリの人権状況に関する特別報告者Alioune Tine

少数者問題に関する特別報告者Fernand de Varennes

人権と国際連帯に関する独立専門家Obiora Okafor

スーダンの人権状況に関する特別報告者Aristide Nononsi

人権と環境に関する特別報告者David R. Boyd

現代奴隷制に関する特別報告者Urmila Bhoola

アフリカ系の人々に関するワーキンググループAhmed Reid (Chair), Dominique Day, Michal  Balcerzak, Ricardo A. Sunga III, and Sabelo Gumedze,

発展の権利に関する特別報告者Saad Alfarargi,

先住民族の権利に関する特別報告者Victoria Tauli Corpuz,

民主的かつ公平な国際秩序の促進に関する独立専門家Livingstone Sewanyanan,

障害者の権利に関する特別報告者Catalina Devandas Aguilar

ミャンマーに関する特別報告者Yanghee Lee

女性差別に関するワーキンググループElizabeth Broderick (Vice Chair), Alda Facio, Ms. Ivana Radačić, Meskerem Geset Techane (Chair), Melissa Upreti,

中央アフリカ共和国の人権状況に関する独立専門家Yao Agbetse

1967年以降占領下のパレスチナの人権状況に関する特別報告者S. Michael Lynkthe

ハンセン病患者とその家族への差別撤廃に関する特別報告者Alice Cruz

拷問と非人道な扱いに関する特別報告者Nils Melzer

人権と環境に関する特別報告者 David R. Boyd

カンボジアの人権状況に関する特別報告者Rhona Smith

アルビニズムの人たちの人権の享受に関する独立専門家Ikponwosa Ero

エリトリアの人権状況に関する特別報告者Daniela Kravetz

表現の自由に関する特別報告者David Kaye

べラルースの人権状況に関する特別報告者Anais Marin,

多国籍企業と人権に関するワーキンググループGithu Muigai (Chair), Anita Ramasastry (Vice-chair), Dante Pesce, Elzbieta Karska, and Surya Deva

集会結社の自由に関する特別報告者Clément Voule,

反テロに関する特別報告者Fionnuala D. Ní Aoláin

人権擁護者の状況に関する特別報告者Michel Forst

国内避難民の人権に関する特別報告者Cecilia Jimenez-Damary

恣意的拘禁に関するワーキンググループJosé Antonio Guevara Bermúdez (Chair), Leigh Toomey (Vice-Chair on Communications), Elina Steinerte (Vice-Chair on Follow-up), Seong-Phil Hong and Sètondji Adjovi

失踪に関するワーキンググループ Luciano A. Hazan (Chair), Tae-Ung Baik (Vice-chair), Houria Es-Slami, Henrikas Mickevičius, Bernard Duhaime,

人種主義と人種差別に関する特別報告者E. Tendayi Achiume

文化的権利に関する特別報告者Karima Bennoune

ソマリアの人権状況に関する独立専門家Bahame Nyanduga,

こどもの性的搾取に関する特別報告者Maud de Boer-Buquicchio

 

英語原文https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=25746&LangID=E
和訳文責:藤田早苗と翻訳チーム

                                                                  画面の背景写真は、ジュネーヴのパレ・ウィルソン


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