日本
国境なき記者団は日本のメディアの自由の低下を懸念する
2016年4月11日
国境なき記者団(RSF)は今週行われる、表現の自由に関する国連特別報告者、デビッド・ケイ氏の公式訪問に先立ち、日本におけるメディアと情報の自由に関する現在の状況の評価を行った。
国境なき記者団は2012年12月に安倍晋三氏が再び首相になって以来、日本におけるメディアの自由が後退していることにケイ氏の注意を促す。安倍政権によるメディアの独立性への脅し、最近のキャスターの降板、主要な放送局内で自主規制が進んでいることなどは日本の民主主義の基盤を危険にさらしている。
政府によるメディアへの圧力の、憂慮を引き起こしているもっとも最近の兆候は、公共放送のNHKが時報番組のキャスターである国谷弘子氏を降板させたことであり、これはジャーナリストの中で広いショックを引き起こした。彼女はNHKの番組の中でも、数少ない調査報道と分析を含む番組である「クローズアップ現代」の主催をしていた。2014年7月の菅義偉官房長官へのインタビューが、彼女の契約が先月終了したことの理由の一つだといわれている。
ほかにもおそらく降板を強いられたと思われるジャーナリストがいる。そこに含まれるのが、毎日ニュースのジャーナリストでTBSの「ニュース23」のコメンテーターをし、昨年末に安保法制を批判した岸井成格氏と、政権に批判的であるとしてよく知られテレビ朝日の「報道ステーション」のキャスターを務めた古館伊知郎氏である。
「安倍晋三首相の政権は、メディアの自由と市民の情報の権利への考慮をますますしなくなっているように見える」と国境なき記者団のアジア太平洋デスク長のベンジャミン・イスマイルは述べた。
「特別報告者は日本の公共放送サービスへの政府による干渉の問題を取り上げる必要がある。我々はまた彼にメディア管理の法枠組み、秘密保護法、そしてメディアの自由に脅威を加えうる憲法改定について調査するように強く要請する。
政府は批判的な報道に対する敵意を隠していない。2月8日の国会で高市早苗総務大臣が「偏向した政治報道」を続けるテレビ局は停波すると脅した。その翌日、記者の質問に答えて高市氏は、事実を曲げてはいけないとする放送法4条と、総務大臣が審査を経ずに停波命令を出すことができるとする電波法76条を引用して前日の脅しを繰り返した。
保守的なビジネスマンの籾井勝人が2014年にNHKの会長に任命されたことは、政府がニュース報道を管理しようとする企てとしてとられた。籾井はNHKは「番組制作で政府の見解から逸脱すべきではない」と発言したことによって、論議を引き起こした。彼はまた秘密保護法の採択も支持した。2015年6月には自民党議員が、政府に批判的なメディアへのスポンサーをやめるように企業に圧力をかけて、そのようなメディアを懲らしめるよう政府に強く勧めた。
最後に、憲法改正案に「公益と公の秩序を害するもの」という概念が含まれているのは、言論の自由とメデイァの自由を抑制する仕組みを提供することになりうる。この概念はメディアの報道や見解に、国家への脅威という汚名を着せるために、政府高官によって恣意的な具体例をあげた上で任意に乱用される可能性がある。
特別報告者は当初は2015年の12月に日本を訪問する予定であったが、日本政府がその訪問延期を要請した。多くの人が、それは日本政府が「特定秘密保護法」についての議論を避けたたかったからだ、ととらえた。
この法律は「国家機密」を漏らした内部告発者や、「不法に」取得した、または内部告発者から得た情報を報告したジャーナリストやブロガーを最長10年の刑に課することができる。国境なき記者団による報道の自由度ランキングで日本は2015年には180国中61位である。
翻訳: 藤田早苗 (エセックス大学 人権センター)
Japanese translation: Sanae Fujita (Human Rights Centre, University of Essex)
声明原文
https://rsf.org/en/news/rsf-concerned-about-declining-media-freedom-japan